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日本は古来より生活のあらゆる場面で木を使い、木に親しんできました。それは自然との共生であり、暮らしの有り様や衣食住と一体化したものであり、必然的なものであったに違いありません。

こうした「木の文化」に焦点を当て、昨今、急増するインバウンド(来日観光客)への「木のおもてなし」につなげるとともに、木を使った建築や製品、サービス、体験の価値を向上させることで、観光需要の創出はもちろん、地域材利用を促進し、地方創生を図っていくことが期待されています。

そのため、(公社)国土緑化推進機構と(株)ユニバーサルデザイン総合研究所は、2018年度には林野庁補助事業により、「木の文化」を活かした「木のおもてなし」を促進するための基本的な考え方や視点、展開モデル、参考事例を紹介した「ガイドブック」を制作するとともに、モデル的な「コンセプト映像」、検討委員の「特別インタビュー映像」を制作しました。

2019年度では、前年度の「ガイドブック」の趣旨に則り、地域内の林業・木材関係者と観光・まちづくり関係者等が連携して、地域内に集積された「木の文化」を再整理・再編集した「木のおもてなし」のモデルツアーを実施する「モデル事業実施地域」を募集しました。結果、検討委員会を踏まえて採択された全国4地域でワークショップ等を開催しました。そのうち、2地域についてはプロモーション映像を制作するとともに、本事業の検討委員による「公開座談会」を開催し、これらの成果を「ガイドブック2019」としてとりまとめました。

これらの成果を活かして、全国各地で「木の文化」を活かした「木のおもてなし」が拡がっていくことを願っています。

「木の文化・木のおもてなし」ガイドブック



目次

  • 「木の文化・木のおもてなし」がめざすもの ー3ー
  • 「木のおもてなし」に活かす日本の「木の文化」の定義 ー3ー
  • 「木の文化・木のおもてなし」の視点 ー4ー
  • 私が考える「木の文化・木のおもてなし」
  • 涌井雅之/隈研吾/水戸岡鋭治/デービッド・アトキンソン/赤松明/戸村亜紀 ー6ー
  • 「木のおもてなし」の提案 ー8ー
  • 「木の文化・木のおもてなし」事例のご紹介 ー9ー
  1. 秋田 ~秋田杉と技、そのいにしえと今を味わう     ー10ー
  2. 北海道オホーツク地域 ~クラフト文化を巡る     ー12ー
  3. 木工のまち・大川と美しい列車の旅 ~300年の歴史とともに郷土に親しむ     ー14ー
  4. 新潟・上越 ~雪国で暮らす知恵は、思いやりと優しさの証     ー16ー
  5. 富士山 ~荒ぶる自然と信仰、木とともに生きる旅     ー18ー
  6. 高山・飛騨 ~木の文化をたどって歩く、歴史と技の楽しみかた     ー20ー
  7. 熊野古道・伊勢路 ~巡礼と尾鷲ヒノキを辿る現代の旅人     ー22ー
  8. 高知県梼原町 ~雲の上の町で森と出逢う     ー24ー
  9. 吉野・堺・灘 ~桶樽と日本酒の物語     ー26ー
  10. 長野・軽井沢 ~懐かしくて、新しい、木と森が迎える国内有数のリゾート     ー28ー
  11. ブナの森とヒバの森 ~癒しと健康、五感への贈り物     ー30ー
  12. 地域のアンテナショップが伝える木のおもてなし     ー32ー

以下よりPDF版のダウンロードが行えます。


「木の文化・木のおもてなし」ガイドブック 全体版

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※ファイルサイズが大きいため、分割版も以下よりダウンロード可能です。


「分割版 表紙~P.8」

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「分割版 事例のご紹介①~④

PDF書類 / 1.77MB ダウンロード

「分割版 事例のご紹介⑤~⑧」

PDF書類 / 1.55MB ダウンロード

「分割版 事例のご紹介⑨~⑫・奧付・裏表紙」

PDF書類 / 1.57MB ダウンロード

「木の文化・木のおもてなし」事例のご紹介映像

1  秋田 ~秋田杉と技、そのいにしえと今を味わう

天然秋田杉は秋田県の米代川流域を主産地として成育し、能代市を中心に一大木材産業を築いてきました。1590年には豊臣秀吉が、秋田地方の領主であった秋田実季らに命じて造船や伏見城建築のために秋田杉材を献上させたため、秋田杉は全国的に有名になったと言われています。新旧の美しくも荘厳な建築物から、現代・秋田の玄関口、そして技を極めた木使いの品まで、この地に根付く木の文化はその伝統を活かしつつ、常に新しいおもてなしの心を追求しています。


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Akita: Akita Cedar and the Skill, Taste the Tradition and the Present

2  富士山 ~荒ぶる自然と信仰、木とともに生きる旅

富士山は日本を代表する観光地ですが、いくたびもの噴火により神の住む山として畏れられ、崇められてきた歴史もあります。今では海外からの来訪者が多数訪れ、富士山を堪能できる施設や製品、サービスがあります。富士山麓に広がる森林は、富士山信仰や人々の生業と深く関係してきました。伝統的建築物や民家に木材が使われてきたほか、富士ひのきはブランド材として新たな活用が広がっています。さらに木と森を通じて、日本の良さや自然への親しみを伝えようとする取組も増えています。富士山という日本のシンボルを、木の文化という文脈でたどってみるとこの地の新しい楽しみ方が見えてきます。


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Mount Fuji: Rough Nature and Faith, a Journey to Live with Trees

3  吉野・堺・灘 ~桶樽と日本酒の物語

蔵のある奈良県吉野郡は昔から林業の盛んな地域でした。蔵の横を流れる吉野川上流にある川上村は、室町時代から500年の植林の歴史を持つ林業地域で、桶の部材である「樽丸」の産地として発展してきました。樽丸は吉野川を筏で下り、海に出てから西宮・堺へと運ばれ、樽は西宮で、桶は堺で作られ、名醸地の灘に運ばれ酒造りに使われ、その技術は今も受け継がれています。地域をまたぎ、森から木材、樽丸から桶樽、そして酒造り、それを供する店まで、物語は続きます。


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Mount Fuji: Rough Nature and Faith, a Journey to Live with Trees