日中緑化交流基金
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平成26年度 助成事業実施団体による活動状況報告


 日中緑化交流基金による助成事業では、日本の民間団体と中国側カウンターパートが協力し中国各地で多様な活動を展開しています。これら助成事業の取り組みについて、各団体から報告をいただいておりますので、その一部をご紹介します。

1.四川省叙永県石漠化改造緑化造林モデル事業
 
「日中緑化交流基金事業」での多彩な出会いと暖かい心
 
広島県日中親善協会
事務局長 岡本敏秀
 
 平成26年10月23日第28回広島県日中親善協会訪中団(加藤会長を含む22名)は、広島県・四川省友好提携締結30周年の記念事業の一環として四川省で記念植樹を実施した。
 10月末にしては暖かく、気温18度、曇り空に時々晴れ間がのぞく中、成都市から南東へ高速道路等を利用してバスで約5時間、疲労の残る中、ようやく現地叙永県へ到着した。ここは昨年から植林を実施している地域で、地元の人民政府や造林局、人民対外友好協会など関係者や地域の方々約50名に温かく出迎えていただいた。
 
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叙永県で地元の方々と集合写真
広島県日中親善協会
四川省助成県石漠化改造緑化造林モデル事業
 
 記念植樹に先だって、石漠化の進んでいる地域の植林状況を視察した。山あいの深く入り組んだ地域で数年前は石ばかりで村人は貧しい暮らしを強いられていた。そこで、新しい取り組みとして、まず堤を作り、土を入れ、次に植林をする工程により始めたものの財政負担も大きく困っていた。このような状況の中、石漠化改造緑化造林モデル事業による援助により植林をすることが出来、環境改善や生活の向上が図られ非常に喜んでいると説明された。その後、叙永県の中心部に戻り記念植樹を行った。式典での代表者の挨拶では、「叙永県は林業県とはいえカルスト台地で石漠化が進んでいる。日中緑化交流基金を活用した植林により緑の山河を取り戻しつつあり、環境改善が図られ友好のシンボルだ」と感謝の意が表された。その後記念碑の除幕式を日中共同で行い友好の印として桜の苗木を関係者全員で力を合わせて植林した。その感謝の印として叙永県緑化委員会から訪中団全員に栄誉証書が授与された。人民政府主催の歓迎会では「この植林は成果を上げているのでぜひ事業を継続していただきたい。そして今後とも一層の交流を深めていきたい」と挨拶があった。
 
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叙永県での記念植樹
広島県日中親善協会
四川省助成県石漠化改造緑化造林モデル事業
 
 このように、「日中緑化交流基金事業」では、緑化事業は着実に推進されており、加えての多彩な出会いと温かい心を通じて日中間の相互理解と絆が益々強くなって来ていると感じている。
 今後とも、この事業の継続を願っている。  
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事業の記念碑で
広島県日中親善協会
四川省助成県石漠化改造緑化造林モデル事業



2.山西省荒山植生復旧嵐県モデル林造成事業
 
忍の一字、黄土高原の緑化活動
 
特定非営利活動法人 農と食の産業おこし
理事長 山崎金重
 
 当団体が行った中国に於ける生態環境林地造成事業支援活動も、山東省冠県の二期6年間、内蒙古自治区赤峰市に次いでこの山西省嵐県の黄土高原に於ける助成活動は、三つ目の緑化事業助成活動だが、2008年以来今年で8年になる。中国の国土緑化事業の進展を裏打ちするように、今回の黄土高原に於ける林地造成事業は、文字通り未経験の飛び抜けた作業悪環境下で進めている。つまり一回目の山東省冠県での植林作業は、文字通り見渡す限り一面が風砂源に於ける林地造成であったが、一転して内蒙古赤峰市でのそれは道無き道を連日200キロから400キロも往ききしての力仕事に一変した。そして今回の山西省のそれは、嘗て敗戦直後の中学校時代の春、阿蘇杵島・往生岳の中腹の杉植林奉仕活動の辛い想い出を懐かしむに十分な難事業と言えよう。
 林地造成作業の困難に加え、内蒙古自治区の事業がそうであったように、植栽木が事業の主目的、即ち内蒙古自治区内事業では農耕地の砂漠化拡大防止であり、山西省嵐県の場合黄砂の発生抑制と山地表土流失防止であるが、事業地のカウンターパートは途方もない月日を、ジーッと只管待ち続けると言う、強靱な忍耐力を強いられている。日本人には敢えて不得意とも言える“只管待ち続ける”忍の一字は、例えば同じポプラにあっては冠県のような抜群の生育環境では伐期8年に対し、伐期25年と言う。優に三倍の時間的忍耐力を強いられている。
 
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山西省嵐県の現地での中国側カウンターパート
特定非営利活動法人農と食の産業おこし
山西省荒山植生復旧嵐県モデル林造成事業
 
 赤峰市の事業を続ける2010年からの三年間、日本であれば或いはこの一見不合理で理不尽とも受け止められかねない事業に、察するに平然、黙々としてこれまで取り組んで来、そしてこれからもそうあり続けるであろうカウンターパート、中でも其の現場を守る人達(「林場」と言う専業民間事業所の職員もしくは雇員であろう)に、ある種の感銘に近い思いを抱いた。そして今、再びそのような思いに駆られつつ、目下山西省呂梁市嵐県での植林交流活動を続けている。
 誤解ないように附言しておくが、山東省冠県のような植栽林の生育環境抜群の地にあっても、「森を創る」と言う、この一点に関する限り、その強弱、優劣は微塵も読み取れない。岩山そのものと言える泰山露岩台地に見られる植林技法への取り組みには、真剣そのものがひしと看取されるのである。そう言う私も既に七十年近くも昔、大戦直後には阿蘇の山高きところに或いは同じ思いで杉を連日植林してきた経験を持つ。だが、残念ながら今日の内モンゴルや山西省の植林事業に観取れる意味での真剣さがあったかどうか、甚だ自信が揺らぐ。勿論未だ一人の児童に過ぎなかった点を割り引いても、である。
 山西省の事業支援活動は、来年度の事業実施で終了する筈で、其の後三度山東省冠県での、三カ年300ヘクタールの活動が控えている。日中緑化交流基金の活動で、今述べたような体験をするとは勿論夢想だにしなかっただけに、国内での植林活動では夢の又夢、望外の貴重な体験をさせて戴いている。



3.緑の大地再生〈重生緑色大地〉・・・蘭州市南北両山水土保全林造成事業
 
10年の成果―――成長量調査論文に
 
NPO法人あきた白神の森倶楽部
理事長 大髙一成
 
 平成22年度から取組んできた蘭州市南北両山水土保全林造成事業は4年目となり、本年9月で98ha.に245,000本の植栽を完成しました。
 
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蘭州市七里河区環境緑化工程指揮部の皆さんと記念撮影(中央が恵光偉総指揮)
NPO法人あきた白神の森倶楽部
蘭州市南北両山水土保全林造成事業
 
 当倶楽部は事業の円滑な遂行のため毎年技術調査団を派遣し、現地カウンターパートとの意思疎通を図ってきましたが、中国林業庁からは「(1)生存率は95%の高い水準を維持している。(2)モデル林的役割も十分果たしている。」と高い評価を得ており、事業を総括している甘粛省外事弁公室、蘭州市南北両山環境緑化工程指揮部、実行担当の七里河区工程指揮部のご努力に対し心から敬意を表します。
 蘭州市で取り組んでいる緑化プロジェクトは、裸地化している高原地帯や荒廃地の早期緑化を目的に植栽樹種は側柏3を主体に山杏1の混交で造成してきましたが、側柏中心の単純林に近いものといえます。
 
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植栽現地での検討会
NPO法人あきた白神の森倶楽部
蘭州市南北両山水土保全林造成事業
 
 当倶楽部は従前から現地検討会において、(1)単純林は混交林に比べて保育管理面において比較的容易な反面、本来森林が持つ特性としての生物多様性が乏しいことに加え、気象害や病虫害を受けやすく、時には植栽木の枯損ばかりでなく、林地崩壊を伴う大規模な森林被害に至ることがあること。(2)植栽作業に携わる農民にインセンティブを与える樹種の導入などにより、地域住民との理解共生の深まりが期待できること、などから本来目的の水土保全機能を十分に発揮しながら、植栽樹種の多様化を図り将来的には混交林に誘導して生物多様性の高い森林造成を目指すべきとの考え方を提案してきました。中国側との検討結果に基づき、平成24年度事業からは従来の側柏、山杏に刺槐、紅柳を加えた4樹種等分割合の混交植栽で実行しております。
 本年8月の技術調査団による現地調査では植栽木の良好な生育状況を確認してきましたが、森林造成は超長期にわたるもので、植栽後の保育管理は極めて重要なものであることを再認識し合い、意思疎通を図りながら取組んで行くことを再確認したところです。
 
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10年生コノテガシワ植林地の生長量調査状況
NPO法人あきた白神の森倶楽部
蘭州市南北両山水土保全林造成事業
 
 また本年の現地調査は、例年の通り当年実行箇所の植栽、保育、潅水等の実行状況と次年度予定箇所の確認調査等を行ないましたが、本年はこれに加え秋田県森林整備課に勤務する澤田智志農学博士を調査リーダ-にお願いし、秋田県林業育成協会が取組んだ側柏10年生植栽地内に2調査地と七里河区工程指揮部が管理する側柏30年生植栽地内に1調査地 (試験木1本の伐倒)の3箇所の試験地を選定して側柏の成長量調査に取組みました。現在その科学的分析結果を取りまとめ中です。
 調査結果は日中緑化交流基金へ報告致しますが、論文として関係林学会や林学専門誌等に発表を予定しております。
 
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樹幹解析の輪切りパネル
NPO法人あきた白神の森倶楽部
蘭州市南北両山水土保全林造成事業



4.陝西省淳化県における黄土丘陵植林緑化事業
 
黄土高原に文冠果の花を
 
NPO法人 環境保全ネットワーク京都
 
 当プロジェクトで陝西省淳化県の黄土高原地帯に文冠果の植樹を始め、今年で三年が過ぎ、平成26年の助成事業から、新たに三年間の計画で、二期目の取り組みを始めています。
 文冠果は、ムクロジ科の落葉樹で、直根が長く根の周りに水分をためる層があることから、乾燥に強く水土流失防止機能が高いため、陝西省では三北防護林の樹種として指定されています。また、当地区の周辺にも野生種がみられ、郷土種として地域の生態系にもやさしい樹種であると言えます。
 
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文冠果の花
NPO法人環境保全ネットワーク京都
陝西省淳化県における黄土丘陵植林緑化事業
 
 一方、文冠果は実に油を多く含んでおり、葉には漢方成分があることから、その活用が期待されており、当プロジェクトのカウンターパートである官山林業専業合作社では、そのうち葉の成分に注目し、文冠果の葉をお茶の葉と混ぜた薬用茶として利用するため、プロジェクト周辺区域一帯に文冠果を植え、黄土高原の水土流失を防ぐとともに、葉を採取して得られる収益により、永続的に植栽地を管理する計画を持っていました。そうした中、陝西省林業庁から当団体へ官山林業専業合作社の紹介があり、当団体では黄土高原の水土流失防止機能の強化につながると考え基金へ申請をし、事業がスタートしました。
 当初は、林権制度改革で出来たばかりの林業合作社であったことや、初めての民間のカウンターパートであったことから、事業執行に不安がありましたが、毎年現地を訪れて植栽されている状況を確認するとともに、カウンターパートや現地スタッフと交流する中で、信頼関係を築きながら事業を進めてきました。このほど三年間の一期計画が終了し二期目に入ろうとしているところです。今年の11月にも現地を会員5名で訪れ、平成25年度助成事業の確認と、1期目の事業地に記念碑の設置をお願いしていたことから、その除幕を行いました。
 
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記念碑の前で現地スタッフと
NPO法人環境保全ネットワーク京都
陝西省淳化県における黄土丘陵植林緑化事業
 
 ところで、文冠果は毎年春に白い小さな花をたくさん咲かせる美しい植物で、観賞用としてのもう一つの魅力があります。また、この花が黄土高原に咲いているということは、すなわち水土流失防止機能が高まっているということでもあり、数年先にこの白い小さな花が私たちの協力地に咲き誇っている様子を見ることを楽しみに、植樹協力活動を続けていきたいと考えています。



5.ソミトソムダイエルヘト査地区における砂漠化防止植林緑化事業
 
NPO法人 草原の風 活動報告
 
NPO法人 草原の風
会員 後藤誠也
 
 平成26年度NPO法人草原の風の植林活動も11年目を迎えました。砂漠化した土地に緑を取り戻そうという壮大な計画と使命感を持ち、志のある仲間と共に活動してきた11年でありました。しかし、PM2.5始め地球規模での環境悪化の進行はそう簡単に止められるとは考えておりませんが、一歩一歩進めていく決意が重要と認識しております。
 今年は5月6日より、総勢25名で内モンゴル自治区オルドス市オトク旗ダイエルヘト地区に、旱柳、楊柴を植える活動を致しました。地元の内蒙古師範大学の学生たちも応援に駆け付け、日本から参加した学生たちと休憩時間にモンゴル相撲を取ったり、交流を図りながら良いコミニケーションがやれたのではと感じております。
 そこで過去11年の実績をご報告いたしますと、植林した木々の本数は28万本を超え、植林した広さは約700ヘクタールまで拡大いたしました。参加したメンバーも延べ260名を越え長野県を基軸に広がりを見せております。
 こう言った私たちの活動を受け、地元の関係者も前向きに且つ主体的に植林活動を邁進しております。また中国政府からの予算も年々増加し、環境問題が如何に重要かグルーバルな視点から各国もプライオリティの上昇が伺えます。
 最後に、やはり植林活動の主体は個人のボランティアであり資本力に限界があります。
 そんな背景の中、日中緑化交流基金からの援助は内モンゴルの皆様同様に、私たちNPO法人草原の風に参画する同志にとっても感謝の一言に尽きます。大局的な視点で申しあげれば、今後の継続的な活動により中国と日本の国交信頼向上にも貢献できると信じて活動して行きたいと思います。
 
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日本と中国の学生達が一緒に植林し交流しました。
NPO法人草原の風
ソミトソムダイエルヘト嘎査地区における砂漠化防止植林緑化事業



6.寧夏回族自治区呉忠市の黄土丘陵における水土保持造林事業
 
金沢市日本中国友好協会における緑化事業の取り組み
 
金沢市日本中国友好協会
 
 当協会では、平成20年の四川大地震被災地の四川省綿竹市で地震災害復旧緊急造林プロジェクト事業を手がけ、これを実績に平成24年度からは寧夏回族自治区呉忠市の黄土地帯と青海省西寧市楽都県の両地区で植樹事業に取り組んでいる。
 この地域を選んだ理由の一つに、懇意にしているNPO法人世界の砂漠を緑で包む会(事務所は金沢市)が長年植樹活動をしてきた内蒙古自治区阿拉善盟に近いこともあり、お互いに情報を交換しながらより良い活動ができるということや、呉忠市と西寧市の現地は、中国にしては割合近く、我々は1回の訪中で2ヶ所を回れるというメリットもある。
 平成25年3月、平成26年7月の2回にわたって、現地を訪れ、現地スタッフとの意見交換、事業推進上の打合せ、記念植樹、そして夜の交流をしてきた。いずれも和気あいあいに交流でき、植樹に対する地元の熱意も肌で感じ取ることができた。
 
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呉忠市の現場にて
金沢市日本中国友好協会
寧夏回族自治区呉忠市の黄土丘陵における水土保持造林事業
 
 呉忠市では、「黄土丘陵における水土保持造林事業」であり、生態改善が必要な地域である。少雨地帯であるからこそ、雨もふらず植樹作業は計画どおりに進められるが、反面灌漑もかかせない作業である。昨年植えたニセアカシアが青々と枝葉を伸ばしている様子に感無量であった。灌漑用の施設も整備されてきたが、ゆくゆくはこの施設による灌漑が不要になるくらいになることを祈念しながら現地スタッフとともに植樹をした。
 青海省楽都県では、「荒漠化防止モデル事業」ということで、降雨量が少なく、標高が2~3、000mに達する寒冷地での生態系修復のモデルを提供する植樹である。地元スタッフの熱意もあって、順調に植樹は進んでいる。平成25年3月に現地を訪れた際は、どれだけ分厚い防寒具が必要なのか見当もつかなかったが、ジープが曲がりくねった山道を、砂ほこりをたてながら登って行き、現地に到着、車から降りると厚いオーバーは要らないくらいおだやかな気候だったので一同ホッとしながら記念植樹などを行った。
 
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青海省西寧市楽都県の現場にて
金沢市日本中国友好協会
青海省楽都県における荒漠化防止モデル事業
 
 いずれの地区も、日本では考えられないくらい標高が高かったり、降雨量が少なかったりする地区であり、植樹の条件としては悪条件ではあるが、地域住民にとっては緑を取り戻し、生態系を修復することは切実な願いでもある。植樹した木が根付き、順調に成長している様を目にして感慨深いものがあり、事業に取り組んだ意義を感じているところである。平成26年度は最終年に当たることから、全体計画を見回しながら実施してゆきたいと考えている。



7.甘粛省武威市古浪県紅沙塘砂漠造林緑化事業
 
不毛の砂漠を緑に変えた喜び
 
NPO法人 草炭緑化協会
副理事長 中西昭満
 
 私達の植樹活動地の甘粛省武威市古浪県紅沙塘は中国第4番目の面積である騰格里砂漠に面し、砂漠の浸食により農耕地や住居地域に被害が及ぶところです。平成20年度から始めた日中緑化交流基金の6年間にわたる助成により、地元農民と共に東京ドーム約100個分の464haを緑化する事が出来て、鎮砂が進み沙漠浸食から守られた地元住民から非常に喜ばれています。6年間に亘る活動の終了に際し感謝をもって活動をご報告致します。
 
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植樹予定地
NPO法人草炭緑化協会
甘粛省武威市古浪県紅沙塘砂漠造林緑化事業
 
 この地の沙漠の砂は粒径が小さく、沙漠で何時も吹いている風は微風ながら細かい砂を地上10cm位の高さで走らせ、風が一旦止むと砂が地面に落ち、又、風が吹き、止まるとその上に積み上げ、これを繰り返し、砂丘が移動し、農耕地を浸食し、住居地域にも迫って来ています。砂の浸食を防ぐ鎮砂植林帯を作る事が焦眉の急の地域です。年間降雨量180mmの沙漠でもまばらに自生している「花棒」「沙拐棗」の耐乾燥性潅木があり、これらの苗木を植樹してきました。
 
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植樹後6年見事に緑化
NPO法人草炭緑化協会
甘粛省武威市古浪県紅沙塘砂漠造林緑化事業
 
 移動砂地には「草方格」を作ります。草方格は麦わらを砂中に二つ折りで押し込み、地上に15~20cm位出す畝を作り、1辺が2mの碁盤状の砂障ですが、これを毎年30ha造成し、この草方格内と草方格隣接地に40~50ha植樹を実施しました。活動当初はこんな沙漠で木が育つかと心配しながら、植樹に励みました。植えた苗の活着率が良い、根が活動し始める早春(3月~4月上旬)と根が活動を休む秋(9月下旬~11月初旬)に毎年2回植樹をしました。潅水は植樹時と年2回行いますが、2年目以降は潅水無しです。降雨が夏季に絞られ、初年度の管理は大変です。苗木の活着率は75%以上が得られ、旱魃の年には秋に補植し活着率80%以上を維持しました。初年度に植樹した地域4か所に50平方メートルの定点観測地を設け、毎年秋に成長を記録しました。順調に成長し写真の様に背丈を超すまでに成長しています。
 助成活動終了に際し、カウンターパートの馬路灘林場と協定書を締結し、「活動終了後も適切な森林守備隊を組織し、植林地区の保護・育成管理を実施する事」としています。
 
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砂漠の虫を探すカササギ
NPO法人草炭緑化協会
甘粛省武威市古浪県紅沙塘砂漠造林緑化事業
 
 移動砂地が固定砂地と変わり生物の環境が改善され、足元をトカゲが走り、蝶々が「花棒」の薄紫の花に止ったり、鳥も作業中の私達の近くまで飛んできます。野生兎が走って逃げるのも見られます。この様に鎮砂が進み、自然環境も改善され生物も増え生物多様性が確保されつつあるので地元住民から感謝されています。
 私共の活動地はシルクロードの走る甘粛省ですので、観光も兼ねた砂漠植樹体験ツアーを行っています。2014年も実施し、地元農民の方と共に植樹し、日中友好の輪を広げると共に自然環境向上の重要性を実感して頂いています。この活動のカウンターパートして協働した馬路灘林場の皆さんが積極的に協力して頂いた事がこの成功に繋がり日中友好に役立ったと感謝しています。
 
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沙漠植樹体験風景
NPO法人草炭緑化協会
甘粛省武威市古浪県紅沙塘砂漠造林緑化事業



8.吉林省九台市生態保護林建設事業
 
長春市九台における事業が終わりました
 
宮城県日中友好協会
理事 本郷祐子
 
 平成26年9月、次年度植林予定地を調査のため農安県を訪問しました。見渡す限りの大平原の中を、ポプラ並木が延々と続く道をバスでひた走り走って農安県に着きました。なぜかほっとする。ふるさとに帰ってきたような安らぎが・・・
 宮城県日中友好協会は12年前から日中緑化交流基金の助成により吉林省で植林を行ってきました。  
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2005年(平成17年)、洮南市四海林場で、記念碑前で調査団一行
宮城県日中友好協会
吉林省洮南市生態防砂林造成事業
 
 吉林省対外友好協会から植林の協力要請を受けて立ち上がった事業ですが早いもので12年、4事業地にポプラや樟子松を1,200ha植えました。宮城県と吉林省は昭和62年6月に友好県省を締結し、種々の研修や技術研鑽、文化交流を重ねてきましたが、吉林省が国家林業局により「東北三省」という植林重点地に指定されていることを知ったのはこの事業を開始してからでした。13年前第1期事業地洮南市を訪問したとき時速100kmで4時間、ほとんど平地の道を地平線目指して行きましたが、道の両脇は砂地の畑と荒れ地でした。本来はツンドラが溶けて湿地だったところが温暖化と季節風によって乾ききって砂地になったとか。
 
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2006年(平成18年)4月、扶余県増盛林場で、中学生と一緒にポプラを植える。
宮城県日中友好協会
吉林省扶余県防風固砂林建設事業
 
 私たちは事業地一ヶ所を毎年100haずつ三年間植林することを提案、実行してきました。第2期事業地の松原市扶余も砂が積もって何10メートルにもなり砂の堆積下からマンモスの骨が出土し、寺院に展示されていました。松花江の沿岸が20mから30m位そそり立っていて砂の猛威を物語っている。さらに私たちが植林で訪れているとき吹いてきた季節風が真横に砂を吹きつけるように運んできて、バスの脇腹を叩くように襲ったことは今でも恐ろしい記憶として忘れられないものです。
 第3期事業地は長春市と瀋陽市の中間にある四平市双遼、これまでの6年間と違い日本の里山に似た風景は新鮮なものを感じ、歴史ある街で大勢の訪中団は楽しく交流を展開してきました。双遼の街の印象は内モンゴルが隣接しているためか全体的に砂にまみれている感じでした。
 
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2010年(平成22年)4月、双遼市実験林場で、60名が植林訪中
宮城県日中友好協会
吉林省双遼市防風固砂林建設事業
 
 第4期事業地は長春市九台、長春空港(龍嘉空港)や複数のダムなどを擁し長春市に飲料水を供給するなど、重要な役割を担うところですが、この水庫が数年前の大雨には死者を出すほどの災禍をもたらしたそうです。ここは吉林省では比較的雨が多いところのようで、植林地に入る作業道はいつも雪解け水や雨水が流れていて記念碑を設置した場所には2年目、3年目ともとうとう訪れることができませんでした。また林場の周囲はトウモロコシが丈高く植えられており所々深い崖ができているのは雨がもたらす砂地の被害でしようか。去年九台市で300haの植林を終了しその活着率はほぼ100%の成果でした。
 
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2013年(平成25年)4月、九台市上河湾林場で、地元民と一緒に樟子松を植えた
宮城県日中友好協会
吉林省九台市生態保護林建設事業
 
 来年から植える農安県は7、8年前、扶余県調査訪中の折、立ち寄ったことがありましたが、やはり西風の通り道らしくほこりっぽい街でした。遼塔が立派だったこと、街の老人が幸せそうだったこと、仏教を大事にしている土地柄のように思われたことが記憶にあります。
 今回は街に近づくにつれて見えるのは平野とポプラ並木になり洮南、扶余の風景に似てきてとても懐かしく、ふるさとに帰ってきたような安らぎを覚えました。来年記念碑を建立する予定の林場に案内され松花江を挟んで扶余の増盛林場に対峙している土地だと実感してきました。これから3年間の訪問が楽しみです。

日中緑化交流基金